2018年12月08日

Backlogとスクリーン・リーダーと就労環境のアクセシビリティについて

この記事はBacklog Advent Calendar 2018向けに書いた、いちスクリーン・リーダーユーザーのBacklogに対する考え方の変化を紹介するだらだらと長い文章です。

技術的なお話は出てこないのでさらっと読んでいただける反面、物足りないと感じる方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、どうぞご容赦ください。

はじめに

初めて僕の記事を読む方もおられるかもしれないので少し自己紹介をしますと、僕は生まれたころから目が全く見えない全盲の男で、ここ13年くらいは新宿でアクセシビリティ・エンジニアとして仕事をしています。

アクセシビリティ・エンジニアがどんな仕事をしているのかはまたどこか別の機会に書こうと思いますが、僕が働いているオフィスではBacklogを様々なプロジェクトのタスク管理に使用しています。

今回お話しするスクリーン・リーダーとは、コンピューターの画面を、合成音声や点字で表現してくれるソフトウェアです。 Windowsの画面を読み上げられるもの、iPhoneやAndroidデバイスで使用できるものなど、利用者の環境に応じていくつかの種類があります。

僕はこのスクリーン・リーダーを日常の買い物や情報収集だけでなく、お客様とのやりとりや会社でこなす様々な仕事に活用しています。 いわば、30年近く僕がコンピューターを使う際の目の代わりをしてくれている大切なツールなのです。

中でも僕は、Windows用のスクリーン・リーダーであるNVDAを利用しています。 これはオーストラリアのエンジニアを中心としたコミュニティで開発が続けられているスクリーン・リーダーで、NVDA日本語チームが日本語特有の問題に対応した日本語版も提供しています。

誰でも必要なときにダウンロードして使用できるので、近年は僕たちのような視覚障害者だけでなく、自社の製品のアクセシビリティを高めたいと考えているエンジニアの方々にも広く普及しているようです。

Backlogと僕との出会い

僕が初めてBacklogに触れたのは2013年の春頃、会社の社内標準ツールとして導入されたのがきっかけでした。

Backlogはスクリーン・リーダーを介して使用することが難しく、当時の僕は正直なところあまり良い印象を持っていませんでした。 それでも、チームのメンバーといっしょに仕事をする上では避けては通れないツールでしたので、時間を掛けて使い方を覚え、日常の業務にはある程度対応できるところまでになりました。

あるとき、社内のシステム担当者からオフィスで使用しているBacklogをバージョンアップするとの通知が届きました。

一般的に、使っているツールがバージョンアップされると聴くと、こんどはどんな機能が追加されるのだろうとか、使いにくかったこの機能は改善されるだろうかとか、少なからず期待するものだと思いますが、ことBacklogに関して僕が持っていた印象は、「これまでできていたことが今回のバージョンアップでできなくなったらどうしよう」という不安でした。

それまでにも、過去には問題なくできていたことが、バージョンアップ後にできなくなったり困難になったりした経験があったからです。 もちろん、バージョンアップのたびに操作方法を覚え治さなければならなかった経験も少なくはありませんでした。

そんなおり、僕がTwitterで発信したBacklogに関する操作性の不満をRetweetしてくれた知人の紹介で、ヌーラボの橋本様と中村様にお会いすることになったのが去年の12月、スクリーン・リーダーを使っている視覚障害者がどのようにBacklogを操作しているのか、どのようなところに操作性の不満を感じているのかを見ていただく機会を得ました。

1時間ほどお二方にお時間をいただき、僕のつたないデモと説明を熱心に見ていただいた後、僕のBacklogに対する印象が変わりました。 なぜなら、バージョンアップするごとに僕には使いづらくなっていくBacklogでしたので、アクセシビリティのことなど気にもとめていらっしゃらないのではないかと思い込んでいた開発者の方々が、わざわざ福岡から僕の話を聞きにきてくださったことで、これはもしかしたら僕にとってもBacklogが便利なツールになる日が来るのではないかと感じたからです。

今年のリリース情報を受けて

昨年末に橋本様と中村様にお会いしてから月日が過ぎ、現在のバージョンのBacklogもだいぶ僕の手になじんできた頃、Backlogでアクセシビリティの改善が始まったことをリリース情報で知りました。

正直、とてもとてもうれしかったです。 これまで、就労の場面で使用される様々なツールは、どちらかといえばアクセシビリティを意識していないものが多く、僕たちのようなスクリーン・リーダーのユーザーはその使いづらさにじっと耐えるか、そのツールを使うことを諦めるくらいしかありませんでした。

しかし、Backlogの開発チームの方々は僕たちスクリーン・リーダーの利用者をユーザーとしてちゃんと認めてくれていて、そのアクセシビリティを高めるために改善を継続されていることを知り、好感が持てました。

僕はここ数年、スクリーン・リーダーを使っている自分たちの生活の質を向上させるWebアクセシビリティと同じくらい、職場で使用されるツールのアクセシビリティを高める、いわゆる就労環境のアクセシビリティに興味があります。

いつか、Backlogのアクセシビリティの改善が進み、スクリーン・リーダー利用者が「Backlogが導入されているのであれば、自分はこの職場で安心して仕事ができます!」といえるくらい、アクセシビリティの高いツールになることを期待しています。

そして、もし僕がそんなツールのアクセシビリティを高めるようなお手伝いができるのであれば、それは僕にとってもこれからIT業界で働いていこうと考えている後輩スクリーン・リーダーユーザーにとっても素晴らしいことだと考えています。

来年もその先も、僕がBacklogを快適に使い続けられるように、国内だけでなく世界中の働く視覚障害者のスタンダードなツールとしてBacklogが活用される日が来るように願っています。

ヌーラボの皆様のアクセシビリティに対する取り組みに感謝しつつ、多くのBacklogユーザーの皆様にもどこかで僕がこのツールをどのように使用しているのかを見ていただけるように、アクセシビリティの啓発活動を続けて参ります。

posted by Debugon at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 支援技術
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